2025/6/9

SaaSの海外展開を成功させる完全ガイド|戦略・事例・課題を徹底解説

SaaSの海外展開を成功させる完全ガイド|戦略・事例・課題を徹底解説

国内のSaaS市場が成熟期を迎え、競争が激化する中、多くの経営者や事業責任者が、次の成長の舞台として「海外」に熱い視線を送っています。

しかし、海外展開は「言うは易く行うは難し」。言語や文化、法制度の壁、そして日本での成功体験が通用しないマーケティング戦略。その道には、数多くの困難が待ち受けています。

「何から手をつければいいのか分からない」 「失敗のリスクを考えると、一歩が踏み出せない」

この記事は、そんな悩みを抱えるあなたのために書かれました。SaaSの海外展開を成功に導くための戦略、乗り越えるべき課題、そして先人たちの成功事例まで、そのすべてを網羅した「完全ガイド」です。

なぜ今、日本のSaaSは海外展開を目指すべきなのか?

厳しい道のりであるにもかかわらず、なぜ今、多くの日本のSaaS企業が海外を目指すのでしょうか。そこには、リスクを上回るだけの大きな魅力と、時代の追い風があります。

1.国内市場の限界と、巨大なグローバル市場の魅力

日本のSaaS市場も成長を続けていますが、世界の市場規模と比較すれば、その差は歴然です。特に北米は世界最大のSaaS市場であり、日本で成功したプロダクトが通用すれば、成長ポテンシャルはまさに青天井といえるでしょう。国内市場での成長が鈍化し始める前に、次の成長エンジンとしてグローバル市場に目を向けるのは、企業として持続的に成長するための必然的な戦略なのです。

2.円安を追い風に変えるビジネスモデル

現在の歴史的な円安は、日本のSaaS企業にとって大きな追い風です。海外の顧客にとっては、日本の高品質なSaaSが、ドルやユーロ建てで考えた場合、非常に価格競争力のある魅力的な製品に映ります。そして、企業側は海外で得た収益を円に換算することで、国内で事業を行う以上の利益を享受できる可能性があります。

3.プロダクトの価値を世界で証明するチャンス

日本市場で磨き上げた自社のプロダクトが、文化や商習慣の異なる海外の顧客にも受け入れられるか。海外展開への挑戦は、自社プロダクトが持つ本質的かつ普遍的な価値を証明する、最高の試金石となります。世界で成功を収めたという事実は、国内でのブランディングや採用活動においても、計り知れない価値をもたらすでしょう。

海外展開の前に乗り越えるべき「5つの壁」

しかし、その道のりは平坦ではありません。海外展開を成功させるためには、事前にこれらの「壁」の存在を認識し、対策を講じることが不可欠です。

1.言語の壁:単なる翻訳では伝わらないニュアンス

最初の、そして最大の壁が言語です。UIのテキストをただ英語に翻訳するだけでは不十分。専門用語の扱いや、文化的な背景に基づいたコピーライティングなど、プロダクトの価値を正確に伝えるための高度な言語能力が求められます。

2.文化・商習慣の壁:ビジネスの進め方や価値観の違い

日本では当たり前の「名刺交換」や「稟議」といった文化は、海外では通用しないかもしれません。顧客の意思決定プロセス、契約に対する考え方、コミュニケーションのスタイルなど、現地のビジネス文化への深い理解と適応が必要となります。

3.法務・税務の壁:GDPR、各国の税制など

海外で事業を行う以上、現地の法律や税制の遵守は絶対条件です。特に、EUの「GDPR(一般データ保護規則)」に代表される個人情報保護法への対応や、国ごとに異なる複雑な税制、現地の労働法など、専門的な知識が不可欠な領域です。

4.プロダクトの壁:機能やUI/UXの最適化

通貨、日付の表示形式、タイムゾーンといった基本的な仕様から、現地特有の業務フローに合わせた機能の追加・修正まで、プロダクトそのものを現地に最適化する「ローカライゼーション」が求められます。日本の常識で作られたUI/UXが、海外ユーザーには使いにくい、というケースも少なくありません。

5.組織の壁:時差やコミュニケーションコスト

本社と現地法人の物理的な距離や時差は、円滑なコミュニケーションを阻害します。また、現地の市場を深く理解し、事業を牽引できる優秀な「カントリーマネージャー」を採用することも、海外展開における最も難しい課題の一つです。

SaaS海外展開を成功に導く4つのステップ

これらの壁を乗り越え、成功の確率を高めるためには、思いつきで進めるのではなく、体系的なフレームワークに沿って計画的にプロジェクトを進めることが重要です。

Step1【市場選定】:自社が勝てる国・地域を見極める

まず、「どの国で戦うか」を決めます。自社のプロダクトが提供する価値が、どの国の、どのような企業の課題を解決できるのかを徹底的に分析します。市場規模の大きさだけでなく、言語の壁の低さ(例:まずは英語圏から)、文化的な近さ、競合の状況などを総合的に判断し、最初のターゲット市場(ビーチヘッド)を見極めることが成功の第一歩です。

Step2【製品戦略】:ローカライゼーションと国際化(i18n)

次に、製品をターゲット市場に適合させます。その際、まず行うべきは「国際化(Internationalization / i18n)」です。これは、将来的に様々な言語や地域に対応できるよう、ソースコードからテキストや通貨、日付といった地域依存の要素を切り離す、建築でいうところの「基礎工事」です。この基礎工事の上で、ターゲット市場の言語や文化、法制度に合わせて製品を最適化する「ローカライゼーション(Localization / L10n)」を行います。

Step3【GTM戦略】:どう市場に参入し、顧客を獲得するか

GTM(Go-to-Market)戦略とは、製品をどう市場に届け、顧客を獲得し、収益を上げるか、という具体的な実行計画です。

  • 価格設定: 現地の物価水準や競合製品の価格を考慮して決定します。
  • 販売チャネル: Webサイトからの直販か、現地の販売代理店と提携するか。
  • マーケティング・営業戦略: どのようなメッセージで、誰に、どうアプローチするか。

これらの要素を組み合わせ、緻密な戦略を練り上げます。

Step4【組織戦略】:グローバルで戦えるチームを作る

最後に、「誰が」「どのような体制で」この壮大なプロジェクトを実行するのかを決めます。本社が強く主導するのか、あるいは現地法人に大きな権限を委譲するのか。いずれにせよ、現地の市場と文化を深く理解し、本社と円滑なコミュニケーションが取れる「カントリーマネージャー」の存在が、成功の鍵を握ります。

【GTM戦略の核】海外向けマーケティングと営業の手法

日本での成功体験が、そのまま海外で通用することはまずありません。現地の顧客に合わせた、全く新しいアプローチが求められます。

コンテンツマーケティングによるリード獲得

現地の顧客が抱えるであろうビジネス上の課題をテーマに、それを解決するためのノウハウを提供するブログ記事や事例、ホワイトペーパーを作成します。そして、SEO(検索エンジン最適化)を通じて、課題解決の情報を探している潜在顧客(リード)に自社を見つけてもらい、関係を構築していく手法です。

プロダクトで成長を牽引するPLG(Product-Led Growth)

近年、特にSaaS業界で主流となっているのがPLG(プロダクトレッドグロース)という戦略です。これは、製品自体がマーケティングや営業の役割を担い、ユーザーを惹きつけるという考え方。無料トライアルやフリーミアムプランを提供し、ユーザーが製品の価値を実際に体験した上で、自然な形で有料プランにアップグレードしてもらうモデルです。営業担当者がいなくても製品が勝手に売れていくため、特に海外展開と非常に相性が良いとされています。

現地パートナー(代理店)との連携

自社だけで市場を開拓するのが難しい場合、現地の市場や商習慣を熟知した販売代理店やリセラーと提携することも有効な手段です。彼らの持つ販売網や顧客基盤を活用することで、迅速に市場でのプレゼンスを高めることができます。

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海外展開の成否を分ける「Webサイト」という第一印象

様々な戦略やステップがありますが、海外の見込み客が、あなたのSaaSに“最初に触れる場所”はどこでしょうか。それは、多くの場合「Webサイト」です。

最初の接点となるサービスサイトの重要性

海外のビジネスパーソンは、課題を解決するSaaSを探す際、まず検索エンジンで情報を探し、いくつかのサービスサイトを比較検討します。このとき、あなたのサイトが英語に対応していなかったり、翻訳が不自然で分かりにくかったりすれば、その時点で「信頼できない企業だ」と判断され、検討の対象から外されてしまうでしょう。Webサイトは、海外展開における、まさに「会社の顔」であり「第一印象」そのものなのです。

海外ユーザーの信頼を獲得するための多言語コンテンツ

製品の機能紹介だけでなく、自社のビジョン、導入事例、詳細な価格体系、そして充実したヘルプドキュメントやFAQが、彼らの母国語で分かりやすく提供されていること。これが、ユーザーに「この製品は、自分たちの国のことをちゃんと理解してくれている」という大きな安心感と信頼感を与え、トライアルや契約への心理的なハードルを大きく下げるのです。

グローバルなWebマーケティング基盤を「Autolingual」で構築する

「プロダクト本体のローカライゼーションだけでも大変なのに、Webサイトまで手が回らない…」

そんな課題を解決し、グローバルなWebマーケティングの基盤を、迅速かつ高品質、低コストで実現するのが、株式会社Enjuが提供するWebサイト多言語化サービス「Autolingual(オートリンガル)」です。

既存サイトに“タグを追加するだけ”で、迅速に海外対応

Autolingualの最大の魅力は、その導入の手軽さです。既存のサービスサイトに大きな改修を加える必要は一切ありません。指定された数行のスクリプトタグをサイトに埋め込むだけで、最短即日から、あなたのサイトを多言語対応させることが可能です。これにより、エンジニアのリソースをプロダクト開発に集中させながら、迅速に海外向けのマーケティングをスタートできます。

SaaS特有の専門用語も正確に伝える高品質な翻訳

SaaSのサービスサイトには、多くの専門用語や独自の機能名が登場します。Autolingualは、最新のAI翻訳エンジンに加え、

  • 辞書登録機能: 自社製品の固有名詞や業界用語を登録し、正確で統一された翻訳を実現。
  • プロによる翻訳チェック: 価格ページや契約に関わる重要なページは、ネイティブ翻訳者による人力での校正も可能。

といった機能で、ビジネスの信頼性を損なわない、高品質な情報発信を可能にします。

海外からのリード獲得を加速させる多言語SEO

Autolingualは、言語ごとにURLを生成する機能や、多言語サイトに必要なhreflangタグを自動で設定する機能など、海外の検索エンジンで上位表示されるための「多言語SEO」に標準で対応しています。これにより、海外の潜在顧客が課題解決の情報を探している際に、あなたのサービスサイトが見つけてもらいやすくなり、質の高いリード獲得を加速させます。

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まとめ

本記事では、SaaSの海外展開を成功に導くための、戦略の全体像から具体的なアクションプランまでを解説しました。

SaaSの海外展開は、言語、文化、法務、製品、組織といった数多くの「壁」が立ちはだかる、壮大で複雑なプロジェクトです。しかし、市場選定からGTM戦略まで、体系的なステップに沿って計画的に進めることで、その成功確率を大きく高めることができます。

そして、その長い道のりの中でも、海外の顧客との「最初の出会い」の場となるWebサイトの多言語化は、プロジェクトの成否を分ける、極めて重要な第一歩です。

「Autolingual」のようなツールを賢く活用すれば、その重要で、しかし手間のかかる一歩を、驚くほど簡単かつ迅速に踏み出すことができます。この記事が、あなたのプロダクトが世界へ羽ばたく、そのきっかけとなれば幸いです。