ホテルのインバウンド集客戦略|OTAと共存しつつ、公式サイトの直販率を高める方法

空港や駅、人気の観光地が、多様な言語を話す外国人旅行者(インバウンド)で溢れ、日本のホテル業界は、かつてないほどの活気を取り戻しています。この大きなチャンスを前に、多くのホテル経営者や担当者の皆様が、集客と収益の最大化に日々知恵を絞られていることでしょう。
しかし、その一方で、こんなジレンマを抱えてはいませんか?
「客室は海外OTAからの予約で埋まるのに、高い手数料のせいで利益が思うように伸びない…」 「もっとホテルの魅力を伝えたいのに、画一的なOTAのページでは限界がある…」
この記事では、そんなホテル業界の共通の課題に対し、OTAと賢く共存しながら、公式サイトからの直接予約(直販)比率を高め、収益性を劇的に改善するための、具体的な戦略と実践的なアクションプランを徹底解説します。
【データで見る】ホテル業界にとってインバウンドが最重要市場である理由

まず、なぜ今インバウンド対策がこれほどまでに重要なのか。それは、インバウンド市場がもはや単なる「追加の収益源」ではなく、日本のホテル業界の未来そのものを左右する「最重要市場」だからです。
コロナ禍前を超える訪日客数と、急増する宿泊消費額
日本政府観光局(JNTO)や観光庁の最新データによると、日本を訪れる外国人旅行者の数は、2024年には、3600万人越えを達成し、コロナ禍前の水準を上回りました。また観光庁の推計によると、2025年3月の訪日外客数は3月としては過去最高の3,497,600 人を記録し、累計の外客数は過去最速で1000万人を超えました。
参照:JNTO”訪日外客統計”
さらに注目すべきは、彼らが日本滞在中に使うお金、特に「宿泊費」にかける金額が、2019年比で大幅に伸びている点です。これは、インバウンド市場が単なる「量」の回復だけでなく、「質」の面でも力強く成長していることを明確に示しています。
人口減少時代の日本で、唯一成長が見込める巨大市場
日本の総人口が減少フェーズに入り、国内の旅行市場の大きな成長が見込みにくい中、世界の旅行市場は成長を続けています。海外に目を向け、この巨大な成長市場の需要を取り込むことこそが、日本のホテル業界が持続的に発展していくための、極めて重要な鍵となるのです。
OTA依存の現状と課題|なぜ「直販率」の向上が重要なのか
OTA(Online Travel Agent)は、世界中の旅行者にアプローチできる、非常に強力で重要な集客パートナーです。しかし、その集客力に過度に依存することは、経営上の様々な課題を生む可能性があります。
経営の柔軟性を高める上で考慮したい販売手数料
Booking.comやExpediaといった海外OTAは、その絶大な集客力と引き換えに、一般的に10%~25%という高水準の販売手数料が発生します。これは、ホテルの利益を圧迫する大きな要因となり、価格設定や投資計画における経営の柔軟性を狭めてしまう可能性があります。
顧客データが資産にならない問題
OTA経由の予約では、宿泊者の詳細な連絡先といった貴重な顧客情報が、ホテル側には十分に渡らないことが多くあります。これにより、宿泊後のサンクスメールを送ったり、季節のお得なプランを直接ご案内したりといった、お客様との継続的な関係構築が難しくなります。せっかくあなたのホテルを気に入ってくれたお客様を、リピーターとして育てていくチャンスを逸してしまうのです。
ブランディングの限界と価格競争からの脱却
OTAの画一的な掲載フォーマットの中では、あなたのホテルが持つ、歴史や建築のこだわり、スタッフの想い、地域との繋がりといった、独自の魅力やストーリーを十分に伝えることは困難です。結果として、旅行者は他のホテルとの違いを「価格」や「立地」でしか判断しにくくなり、消耗する価格競争から抜け出しにくくなる、という側面もあります。
直販率を高めるメリット|収益性と顧客との絆を育む
OTAとの良好な関係は維持しつつ、公式サイトからの直接予約(直販)比率を高めること。これこそが、これらの課題を克服し、ホテルの経営を安定させ、未来への投資を可能にするための、最も効果的な戦略です。
利益率の改善と、自由で戦略的な価格設定
直販予約であれば、OTAに支払っていた手数料が、そのままホテルの利益となります。これは、最も直接的で効果の高い収益改善策です。また、OTAの価格規定に縛られることなく、自社サイト限定の割引プラン(ベストレート保証)や、付加価値の高いオリジナルプランを造成するなど、自由で戦略的な価格設定が可能になります。
顧客との直接的な関係構築とロイヤルカスタマーの育成
自社サイトで予約してくれたお客様のデータは、ホテルの最も大切な資産となります。その情報を基に、誕生日のお祝いメッセージを送ったり、メールマガジンで特別な情報を届けたりと、お客様一人ひとりに合わせたパーソナライズされたコミュニケーションが可能になります。こうした地道な関係構築こそが、何度も訪れてくれる熱心なファン(ロイヤルカスタマー)を育てていくのです。
独自の魅力を伝え、ホテルのブランド価値を高める
公式サイトは、あなたのホテルの「家」です。そこでは、OTAのフォーマットに縛られることなく、美しい写真や動画、そして心を込めた文章で、ホテルの魅力を自由に、そして深く表現できます。価格以外の「ここに泊まりたい」という強い理由を伝えることで、ホテルのブランド価値そのものを高めていくことができるのです。
インバウンド客はホテルに何を求めているのか?最新ニーズを読み解く

では、公式サイトで何を伝えれば、海外の旅行者の心に響くのでしょうか。彼らがホテルに求めているのは、単に「泊まる場所」ではなく、そこでの「特別な体験」と「ストレスのない快適さ」です。
「モノ」から「コト」へ。そこでしかできない特別な体験価値
現代の旅行者は、豪華な設備(モノ)以上に、そのホテルでしか体験できない特別なアクティビティ(コト)に価値を感じます。例えば、「地元の職人と一緒に伝統工芸を体験できるプラン」や、「料理長が案内する市場ツアーと料理教室」など、地域の文化や人と深く繋がれる体験は、旅の記憶に強く残り、高い満足度を生み出します。
予約の決め手となる「口コミ」と「情報の信頼性」
彼らは予約を決める前に、GoogleマップやTripAdvisorなどの口コミを徹底的にチェックします。「Wi-Fiが快適だった」「スタッフが親切だった」といったリアルな声が、何よりの判断材料となります。そして、最終的には公式サイトを訪れ、その情報が正確で信頼できるものかを確認するのです。
個人旅行者(FIT)が重視する、ストレスフリーな滞在
団体旅行が減り、個人旅行者(FIT: Foreign Independent Tour)が主流となった今、自律的に旅を楽しむための環境が求められています。言葉が通じるか、Wi-Fiは快適に使えるか、自国の決済手段は使えるか、といった基本的な快適さ(ストレスフリーな環境)は、もはやホテル選びの「前提条件」となっているのです。
【旅ナカ編】顧客満足度を高める、おもてなしのインバウンド対策
直販率向上のためには、まず、今目の前にいるお客様の満足度を高めることが不可欠です。滞在中に感じる「不便」を解消し、「快適」に変える、おもてなしの具体策を見ていきましょう。
①多言語での館内案内と、翻訳ツールを活用した接客
客室内の案内やレストランのメニューなどを、英語・中国語・韓国語といった主要なターゲット言語で併記しましょう。フロントには、ポケトークのような音声翻訳機を常備しておくことで、スタッフは言葉の壁を恐れることなく、自信を持ってお客様とコミュニケーションを取れるようになります。
②無料Wi-Fiと多様なキャッシュレス決済への対応
今や、全館で快適に使える無料Wi-Fiは必須のインフラです。また、各種クレジットカードはもちろん、銀聯(UnionPay)、Alipay、WeChat Payといった、特にアジア圏で広く使われているQRコード決済に対応できるマルチ決済端末を導入することで、お客様の利便性は飛躍的に向上します。
③食の多様性(ベジタリアン、ハラル等)への配慮
朝食ビュッフェなどで、ベジタリアンやハラルに対応したメニューがあることや、アレルギー情報を、誰にでも一目で分かるピクトグラムなどを使って表示しましょう。こうした小さな配慮が、多様な背景を持つお客様からの大きな信頼に繋がります。
【旅マエ編】インバウンド集客の成否を分けるWebサイト戦略
そして、これらの「旅ナカ」のおもてなしと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが、お客様があなたのホテルを見つける「旅マエ」の段階でのアプローチです。
なぜ「旅マエ」の旅行者へのアプローチが最も重要なのか
現代の個人旅行者は、日本に来る「前」に、自国の自宅で、PCやスマートフォンを使って旅の計画を立てるのが当たり前です。彼らが日本で宿泊するホテルは、多くの場合、この段階で既に決定されています。つまり、インバウンド集客の主戦場は、もはや日本の店頭ではなく、世界中の旅行者の「スマホの中」にあるのです。
全てのインバウンド対策の土台となる「公式サイトの多言語化」
この「旅マエ」の旅行者にアプローチするための、最も強力な武器が、公式サイトの多言語化です。OTAでは伝えきれない、あなたのホテルの本当の「物語」や、特別な「体験価値」を、美しい写真や動画と共に、彼らの母国語で直接心に届けること。これこそが、OTAだけに頼らず、自社の力でお客様を呼び込むための、最も確実な戦略なのです。
ホテルのインバウンド集客・成功事例から学ぶ
実際に、戦略的な情報発信で成功を収めているホテルの事例を見てみましょう。
【事例①】公式サイトの多言語化で、欧米からの直販比率を大幅に向上させた地方の旅館
ある地方の温泉旅館は、これまでOTA経由のアジア客が中心でした。しかし、より高い単価と長期滞在が見込める欧米の富裕層にターゲットを絞り、公式サイトを英語とフランス語に完全対応。地域の伝統文化や自然体験といった「コト消費」コンテンツを充実させた結果、OTAを介さない欧米からの直接予約の比率が、2年間で3倍以上に増加しました。
【事例②】体験コンテンツとSNS発信を連携させ、独自のファンを掴んだブティックホテル
あるデザイン性の高いブティックホテルでは、宿泊者限定のDJイベントや、地元のアーティストとのコラボレーション企画などを積極的に開催。その様子を、多言語のハッシュタグと共にInstagramで発信し、公式サイトのブログ記事でその背景にあるストーリーを深く掘り下げています。これにより、単なる宿泊施設としてではなく、カルチャーの発信拠点としてのブランドイメージを確立し、世界中に熱心なファンを獲得しています。
直販率向上を実現する多言語サイトを「Autolingual」で構築

「公式サイトの多言語化が、直販率向上の鍵であることは分かった。でも、今の予約システムは変えられないし、制作会社に頼む予算もない…」
その、多くのホテルが抱える課題を、スマートに、そして驚くほど簡単に解決するのが、株式会社Enjuが提供するWebサイト多言語化サービス「Autolingual(オートリンガル)」です。
既存の予約システムはそのままに、タグ設置だけで簡単導入
Autolingualは、今お使いの公式サイトや予約システムを一切変更する必要はありません。発行される数行のスクリプトタグをサイトに埋め込むだけで、最短即日から、あなたのサイトを最大130の言語に対応させることが可能です。Webの専門知識がなくても、安心して導入できます。
ホテルの世界観を損なわない、高品質で自然な翻訳
最新のAI翻訳エンジンと、プロのネイティブ翻訳者によるチェック機能を組み合わせることで、機械翻訳にありがちな不自然さを排し、あなたのホテルの洗練された世界観や、おもてなしの心を損なうことのない、高品質な翻訳を実現します。こだわりの施設名やプラン名を登録できる「辞書機能」も完備しています。
多言語SEOで、世界中の旅行者に「見つけてもらえる」公式サイトへ
Autolingualは、海外の検索エンジンであなたのホテルが見つけてもらいやすくなる「多言語SEO」に標準で対応しています。「Japan onsen ryokan」といったキーワードで宿を探している、意欲の高い海外の旅行者に、あなたの公式サイトを直接届けることで、OTAに頼らない、持続可能なインバウンド集客の基盤を構築します。
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まとめ
本記事では、ホテル業界がインバウンドという大きなチャンスを、真の利益へと繋げるための具体的な戦略と実践方法を解説しました。
インバウンド市場の主役は、もはや団体客ではなく、自らの価値観で旅をデザインする個人旅行者(FIT)です。彼らの心をつかむ鍵は、OTAと賢く共存しながら、公式サイトを通じて「直接」関係を築き、直販率を高めていくことにあります。
そのための最も強力な一手は、「Webサイトの多言語化」です。それは、単なる翻訳作業ではありません。あなたのホテルの物語と、おもてなしの心を、世界中の未来のお客様に直接届けるための、最も効果的な投資です。
この記事が、あなたのホテルが、価格競争から抜け出し、世界中から愛される、独自のブランドを築き上げるための一助となれば幸いです。